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 ● 「フィトンチッドとアレロパシー」

 フィトンチッド:

 しばらく前のことですが、「森林浴」がブームになったことがあります。「森や林の中を歩くと気持ちがいい」とか「リフレッシュする」ということで、沢山の人達が自然の中に押し寄せた時期がありました。熱しやすく醒めやすい国民性を反映してか、昨今ではほとんど聞かれなくなってしまいましたが、森林浴の効果が無くなった訳でもウソだった訳でもありません。

 

 我々人間を含めて一般に動物達は危険に遭遇すると、さっさと逃げるか、さもなくば戦って敵を撃退します。でも植物達には足が有りません。そのため、我が身や子孫を護るためにいろいろと考えた(たぶん)結果、「フィトンチッド=化学物質」を発散することを身に付けたのだろうと想像されます。

 森の中を歩いた時に感じられる爽快感は、実はピネン類に代表される多数種の化学物質で、植物が細菌類やカビなどの外敵から我が身を護るための武器みたいなものです。細菌類などに対しては武器として働きますが、幸いにも、人間にとっては全く害がなく、かなり有効なプラス効果だらけのしろもの。昨今の「ハーブ」はその代表と言えます。あれらもフィトンチッド。



このフィトンチッドの殺菌作用をうまく利用しているのが先人達。

例えば、チマキや笹団子、笹餅、ほお葉味噌、など食品の保存方法。冷蔵庫や防腐剤が無い時代には、食べ物を保存することはかなり難しかったでしょう。でも、植物が持つ殺菌効果を経験的に知った人がいて、それを応用していたのは流石ですね。

植物の殺菌作用は自分でも簡単に実験できますから、是非試してみて下さい。手順は次のとおりです。(若いお父さんは、子供の夏休みの自由研究にでもやってみてはいかがでしょう。)

?紙の皿とプラスチックのコップを各2個、食パンと牛乳を少し用意します。

?ちぎった少しの食パンに牛乳をかけたものを、2枚の皿にそれぞれ置きます。

?片方には笹の葉を細かく刻んだものをパンの周囲に置き、他方はそのまま。

?プラスチックのコップに小さな穴を10個ほどあけ、パンが中に入るようにそれぞれに蓋をする。

?1〜2週間すると、カビが生えてきます。でも、カビの生え方に差異が見られます。



アレロパシー:

 実は、植物同士の間でもこの性質を利用した熾烈な生存競争が、人知れず繰り広げられているようです。農業生産の場ではかなり研究が進められているらしく、実用段階に入っているものもあるとか聞いていますが、詳細は定かではありません。

アレロパシー=他感作用=植物が土の中や空中に化学物質を発散し、他の個体に影響を与える現象。

 我々の周囲では「セイタカアワダイソウ」や「ニシアカシア」が一般的です。いずれも、他の植物が嫌がるような化学物質を出して生育を阻害し、結果として自分の生育に有利な環境をつくる。その結果、生育できる植物がどんどん減って、最後には「唯我独尊」状態になるわけです。しかし、セイタカアワダチソウの場合は、自家中毒を起こして自分もダメージを受けるようですが・・・かなりアホな感じ。

 ほとんどの植物は、大なり小なりアレロパシーの能力を持っていることがわかってきています。その影響の程度や影響を与える相手はバラバラですが、今後は徐々に明らかになってゆくでしょう。その中には、敵対する関係だけではなく、「仲良し関係」もあるようです。例えば「Aという植物と人参を一緒に栽培すると、人参の甘味が増す」とか、「Bという植物と混植すると、ピーマンの収穫量が3割アップする」とかの効果も期待できるようになるでしょう。

また「Cを植えると除草の手間が省ける」のもおおいに期待出来そうです。



10〜20年前には想像すらしなかったような不思議な世界が、我々の前に徐々に広がりつつある気がします。玉手箱の蓋が少しずつ開くのを、ワクワクしながら待ちたいと思います。

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